あなたの「今、大変」を解決したい
ヘアサプライ ピア
がん患者など脱毛に悩む患者のQOL向上のため、かつらの販売や専門美容室「ヘアサプライピア」を運営しています。
・・・代表である佐藤真琴さんへの訪問。静岡県の広報誌に掲載されたご自分の写真をみて佐藤さん、「このときまだ、かつらなんです。」「えっ?」「わからないでしょ!」という会話から取材は始まりました。
かさむ治療費の上に100万円のかつらなんて、、、
25歳で入った看護学校での実習で出合った白血病の女性。「かつらを買いたいのだけれど、100万円もするので買えない。月200万円もかかる治療費は息子のための結婚資金を取り崩して払っているのに。」という彼女の辛い思いを知った佐藤さん。そうした患者のQOLを高めるための対応や情報提供が十分できない病院の状況に疑問と怒りを感じ、看護学校3年のとき、中国に単身乗り込み、人毛100%のかつらを買い付けました。そして、誰でも買えるよう4万円台のかつらをネット販売することを開始。2003年、資金5万円の起業でした。
・・・さて、さきほどのご本人のかつら装着写真は、
看護婦さんにまず理解をしていただく必要があったので、医療関係者が集まる学会で、自ら丸坊主にし、かつらをかぶって発表をしたというのです。「でも、頭が寒くて風邪をひいちゃったみたいなのよね。髪の毛の役割は大きい!」と、にこにこしながら、丸坊主にした上でのかつらの装着体験について話しをしてくれました。
ソーシャルビジネスの強みはユーザーに近いところ
直接お客さんと接しているので、十分わかっているつもりでかつらや脱毛についてのアドバイスをしていた佐藤さん。けれど、自分が装着体験してみたら、2割はわかっていなかったと気がついたそうです。
「かつらの後ろの髪の毛をカールさせる方法にしたって、かぶったままクルッと前後ろ逆にして、目の前で髪の毛の状態を見ながらドライヤーを当てれば楽よね」
「帽子を購入してくださる方もいらっしゃるけど、髪の毛がない状態で帽子をかぶるって、こんなにも滑るものだと思わなかった。だから、糸から染めたすべりにくい素材で2,000円以内の新商品を開発したんです。5000円だともう気楽に買えないでしょ。」
・・・いままでのお話から、まさに当事者のもつ課題を発見してそれをビジネスで解決する、いわゆる「社会的企業」の一端がわかりました。抗がん剤の副作用などによる脱毛でかつらや帽子を必要とする当事者は女性ユーザーが多いですし、スタッフのみなさんも女性ですよね。
「うちのお客さんは35歳から60歳。似た年齢のスタッフが揃っているのでユーザーに近い。そういうことって、ソーシャルビジネスの強みであるべきだと思うんです。それに女性の職場って柔軟さが必要なんです。例えば、子育て中のお母さんスタッフは子どもをこの職場の近くの幼稚園に通わせ、終わったら子どもはこの職場に帰ってくるんです。でこぼこな人生をみんなで支えあって働いています。」
・・・実際に昨年は大変なことが立て続けに起こったとのこと。普段お子さんを見てくれているおじいちゃんが入院して、スタッフの一人が働けなくなり、もう一人は階段から落ちてけがをしたという。
「それでみんなでカバーしたんです。ピアは助け合いのビジネスモデルですが、職場のもつ悩みも同じ。患者さんたちに、病気を背負っても働き続けられますよ、って言うには、働き続けられる環境を自分たちがつくっていかなければそんなふうに言えなくなってしまいますもん。」
・・・ほっとするピアのお店の雰囲気が当事者に寄り添う姿勢からきていると理解できました。それも「プロの支援を通じて患者さんの毎日を快適にして日常生活を支える」という事業理念がしっかりあるからですね。
「足るを知る」組織作りはソーシャルビジネスにはとても大切なこと
ピアのやっていることは、儲けようとすれば儲けられる状況にあるし、美容業界はきちんとした技術なしでやれてしまう部分もあるので、目が円マークになっている方々が大勢ピアにラブコールをするのだそうです。
それに対して、佐藤さんは、きっぱり「でも、そうじゃないんです!」
「真摯に人の人生の浮き沈みに寄り添って、ちょっと髪型が決まったことで表にでる元気をもてるような、そんな質の良い日常生活を送れるようプロの仕事をしなくては。それに対し、きちんと報酬をいただくということです。儲けようとするならばスタッフを増やし、売上を伸ばせばよいことです。でも当たり前の給料を払い、きちんと社会保険もある会社。プラス、買い付けのためのキャッシュがあればそれでよい、と思います。」
「うちが独占するのではなく、先行モデルとなって、社会に必要とされている事業を行う似たようなお店がいくつもできることが大切で、それがソーシャルビジネスだと思います。だから、開発したモデルを惜しげもなく提供したいと思っていますし、現にそうすることによって13の連携店が誕生しました。連携店が誕生することでその地域の社会資源の厚みが増しますからね。」
次世代に新しい働き方を知ってほしい
佐藤さんは、プロとしての支援をし、きちんと対価をいただく。だからボランティアではだめで、商売をする会社の形態が必要。また、1年間10億の売り上げではなく、1年間1億で10年間社会の役に立つ、という持続可能性も大事だと言われます。
「こんな世界で食べていけることを若い人たちに知ってもらいたいんですよ。ソーシャルビジネスって会社に勤められなかった人の次の居場所みたいになっちゃってるけど、あくまでもトップランナーとして経営できるということが大切なんです。継続できるように、事業を育て、同時に次世代も育つよう力を割かねば、と思います」
・・・10年もたつと組織が大きくなり、そのことで新たな問題が起こり始めるのは企業もNPOも同じ。今後どう考えていらっしゃるか尋ねると、
「誰にとって必要な事業を私たちはしようとしているのか、あくまでもウォンツではなくニーズに応えていくために事業拡大の必要性の有無についてはしっかり見極めることが大事。右肩上がりに年商があがり、大きくなるとどうしても捨てなければならないことが出てきてしまいますから。」と、彼女は答えた。
会社データ
- ・活動分野
- 福祉、健康・医療、まちづくり
- ・活動対象
- 抗がん剤の副作用や病気で脱毛に悩む人
- ・活動地域
- 全国
- ・設立年
- 2003年(個人事業開始)、2009年(一般社団法人ピア設立、株式会社PEER設立)
- ・運営スタッフ
- 6名(株式会社PEER)
- ・資本金
- 100万円(株式会社PEER)
- ・代表者名
- 一般社団法人代表、株式会社代表取締役 佐藤 真琴(さとう まこと)
- ・連絡先
- (住所)〒434-0046 浜松市浜名区染地台1-43-41
(電話&FAX)053-585-0054(ヘアサプライピア)
(Eメール)infodeletestring@team-peer.com
(ホームページ)http://team-peer.com/
(2012年1月現在の情報です)